ありきたりの表現で恐縮ですが、「されどツール」であるわけです。
ですが、物事をもう少し丁寧に見ていくと、Evernote以前から存在はしており、Evernoteがそれを明確に切り出してみせたような概念もあるように思います。
Evernoteが変質させた、あるいは創造したのではなく、顕在させた概念です。
それを本エントリでは、エントリタイトルのように「Evernote原体験」と呼んだわけです。
余談ですが、上に書いた「Evernote以前(またはEvernote以降)」との表現には、私の心が強くこもっています。
Evernoteとは、それらの表現が成り立つほどのものなのです。
これは、新本格ミステリにとって「十角館以降」との表現が成り立つように、東西ドイツにとって「壁崩壊以降」との表現が成り立つように、重大なことです。
(どちらもそれほど詳しくありません。)
今回はそんな話です。
Gmail
確か発売して間もなかった頃、私はiPhone 3Gを購入しました。国内で発売された最初のiPhoneです。
当時は「iPhoneを買った」と言っても、「iPhone…って聞いたことあるけど、何だっけ」のような反応をされるような時代でしたし、私の記憶に間違いがなければ、まだ「スマートフォン」なる言葉すら耳にすることはありませんでした。私も私で、iPhoneを電車内で取り出すのに少しためらいを感じていたことを覚えています。
その頃から考えると、まさに世界が変わっていく様子をこの目で見てきたと感じられますが、それはまた別のお話とします。
さて、私を含めた当時のほとんどの人には、端末間でデータが同期する発想がありませんでした。これも、知ってしまった現在からするとかなり想像しにくい現象だと言えます。何しろ、確かに自分がPCで作成したデータがiPhoneにもある、との状況がさっぱり理解できないのです。現象として認識はできるのですが、「わからない」のです。データというのは、CD-RやUSBメモリに入れて、手で持ち運ぶものだったはずなのです。
それから、私はiPhoneを購入する以前から、Gmailのアカウントを持っていました。これも、私にとっての理解は「ブラウザから見られるPC用メール」でした。現在のそれとはだいぶ趣が違います。
当時の私からしたら、「携帯メール」と「PCメール」では、「メール」との言葉が同じだけで、全く別のものである認識でした。とても相容れるものではなかったのです。
あるときiPhoneの設定を見ていた私は、メールアカウントにGmailの項目を発見しました。
Gmailとは、私がアカウントを持っているあのGmailのことだろうかと思うわけです。現在のようにiPhoneについての情報が世の中に溢れていることもなく、周囲に質問できる人もいませんでしたので、試行錯誤しながら、なんとかアカウント情報の入力を終えることができました。
すると驚くことに、「PCメール」であるはずのGmailが、「携帯メール」と何も変わらずにiPhoneから使えるようになりました。「PCメール」と「携帯メール」は、相容れないものではなかったのです。
このときの衝撃といったら、おそらく生涯忘れることはないでしょう。いまでもそれをありありと思い出すことができます。
何と言っても、確かにPCで受信したメールが、iPhoneの受信フォルダにもあるわけです。
当初は不思議で不思議でなりませんでした。
それからしばらくは、感動を覚えながら、様々なことに「PCのメールが携帯で見られる、携帯のメール(Gmail)がPCで見られる」ことを活用していきました。
しかしあるとき、私にある思いつきが生まれました。
「Gmailあてにメールを送っておけば、ちょっと覚えておきたいメモとか、もう一度みたいWebページのURLとか、写真とかが、家のPCからでも、出先の携帯からでも自由に見られて、ずっと保存しておけるんじゃないか?」と。
お察しのとおり、これが私の「Evernote原体験」です。
当時の私は、このあたりに不便さを感じていました。
例えば、どこかに行くときに調べた電車の経路や、後で買いたいと思ったものなどは、紙にメモしていましたが、用が済んだら、捨てるかどこかにしまいこむかするしかありませんでした。すると、時間が経ってから再度同じ場所に行くことになったりすると、この前調べたのにまた調べないと、と残念な思いをするわけです。
Webページについては、当時はブラウザのブックマークを使用する以外に方法はありませんでしたが、その数がどんどん増えてしまいますし、他の端末と同期することもなかったのです。
写真についても事情はだいたい同じと言えるでしょう。
自分のGmailあてにメールを送っておけば、これらのことがすべて解決したのです。
つまり、
- 別にすごく必要ではないけど一応とっておきたくて、
- これといって行き場所はなくて、
- もし必要なときはいつでも見られるようにする
そして、私がEvernoteを導入すると同時に、Gmailがその役目を担わなくなったのは言うまでもありません。
終わりに
うまく本文中に含められなかったのですが、「これといった行き場所がないメモやURL」の管理は、結局自分の記憶に頼るしかなかったわけです。