音楽雑誌「エリス」 | 音楽は一生かけて楽しもう
とても読み応えがあり、大満足の一冊でした。
音楽が好きで、音楽についての文章を読むのが好きな方には、ぜひおすすめします。次号以降も楽しみです。
それから、「ERIS」は(たぶん)話題の電子書籍サービス「BCCKS」で作成されていますので、そのあたりが気になる方もチェックしておくと良いかもしれません。
「ERIS」は無料の雑誌ですが、寄付も受け付けているようです。
サポート&支援のお願い | 音楽雑誌「エリス」
書籍のあとがきにも、「この内容ならこれくらいのお金を払ってもいい、という読者には、『エリス』のウェブサイトで寄付も受け付けている」との一文があります。個人的には、お金を払いたいと思えるような内容だと感じましたので、何かしらの方法で貢献したいと思っています。
ところが、このことは、まったく別の興味深い話をもたらします。
近頃、このような「もしお金を払うだけの価値がある内容だと感じたら……」といった話を目にすることが多くなりました。おなじみの、レディオヘッドの話のようにです。
コンテンツの発信側としては、新しいビジネスの方法を試しているということで、特に問題はありません。私にはよくわかりませんが、うまくいくことも、いかないこともあるのだと思います。
悩ましいのは、私のような「受け手」の側です。
「お金を払うだけの価値がある」とは、いったい何のことなのでしょうか。あるいは、「もしお金を払うだけの価値があると感じたら」とは、いったい何を問われているのでしょうか。
大変難しい問題です。これまで、受け手は考慮することがなかった事柄です。
しかし、時代が変わったためなのか、それについて受け手の方で考える必要が出てきてしまいました。
問いの様子からして、いくら考えたところで、明快な回答を導くことができないのは間違いないでしょう。
しかし、考え方の姿勢ですとか、方針のようなものくらいは、何とか明らかにしたいところです。
今回はそんな話です。
考える
私は、いわゆる「思考実験」と同じアプローチを採ることにします。
これはすなわち、できるだけいろんな要素を取り除いていって、それでも導けるような何かを探そうとするものです。
次の記事に、参考になる文章があります。
R-style » 【書評】『100の思考実験』(ジュリアン・バジーニ)
引用いたします。
では、そもそも「思考実験」とはなんだろうか。本書によれば「想像力を駆使したたとえ話」である。
(中略)
複雑な要因を取り除き、できるだけ本質的な事柄に迫るアプローチと言えるだろう。私が考えることが本質的かどうかはわかりませんが、ともかく、要素を取り除いていこうと試みるわけです。
さて、いま考えたいのは、「お金を払う価値があるとはどういうことか」です。
まずは、対象のコンテンツが文章であると想定します。これは、音楽や映画などのように関わる人が多いと、それだけでお金を払う価値があるように思えてしまうためです。
似たような理由から、それは書籍の形をしていないとします。Webページとして閲覧できるものということにしましょう。
その文章は、それほど長くないことにもします。
「それほど長くない」の程度は人それぞれになってしまいますが、少なくとも、「情報量が多い」ことの価値は感じられないくらいです。
その情報の内容は、いわゆる業界情報のような、特定の人にしか知り得ない類のものでもないとします。やはりこれも、「情報が希少だから」との理由で価値が生まれないようにするためです。
それから、その文章を書いた人は明らかでないとします。「あの人が書いた文章だから、価値がある」といった回答を防ぐためです。
ここまで、いろいろと条件を付けてきました。
これ自体はそれほど重要な話ではないと思います。それら以外に条件があっても構いません。
念のためまとめておくと、
- 文章で、
- 書籍にはなっていなくて、
- それほど情報量が多くなくて、
- 業界情報の類ではなくて、
- 書いた人は明らかでない
このように妙な制限を持ち出したのも、「この文章に価値があると感じた方は、お金を払ってほしいです」との問いかけに、誠実に、正面から答えたいがためです。
このようにしていくと、少しずつ、今考えなければならない相手がはっきりしてくるように感じられるでしょうか。
もし、これをお読みの方にそれが感じられたなら、ひとつ、本エントリの目的は果たせています。
とはいえ、一応、私なりの「価値があること」についても何か明言したいところです。
今回に限っては、「価値とは絶対的なものじゃないから……」とか「価値とは一言で言い切れるような単純なものじゃないから……」といった回答では良くありません。それでは、「価値があったら、お金を払ってください」の問いに対して誠実ではないのです。
もちろん、一つ容易に思いつくのは、上にまとめてあるいくつかの制限をすべて付けたとき、その文章には価値がないとする回答です。言い換えれば、情報の価値は上記の条件のどれか(あるいは複数)に必ず当てはまっているということです。
これには、まったく問題がありません。誠実に、価値があることについて回答しています。
ですが、私はそうは思いませんでした。
私の回答は「感嘆があること」です。
終わりに
すぐ上の一文を、タイプする直前まで私は思いついていませんでした。
ここにはまったく別の文章を持ってこようと考えていたのです。
本エントリを通じて、いろいろと考えてたどり着いた答えなのかなと思っています。