2012年12月23日日曜日

紙のような書籍

Clip to Evernote
先日、ソニーの電子書籍端末「Reader PRS-T2」を購入したとのエントリを書きました。それからしばらく経っていますが、これまでのところ非常に気分良く使えています。
私にとって、俗に言う「電子インク」で文字を読むのは初めての経験になりますが、ひょっとすると紙よりも紙らしいのではないかと思うほど、違和感なく読書することができています。

こちらの記事で、次のような言及がありました。

紙書籍・電子書籍関連の気になるニュースまとめ(12月10日~12月16日) - 見て歩く者 by 鷹野凌 -
汎用端末だと、例えばメールのお知らせやらなんやらで、本への没入を妨げられてしまうという感じがします。専用端末だとめっちゃ読書が捗る。だからやっぱり、専用端末は「本読みのための端末」なんだと思います。
読書に集中できるため、本を読む人ほど、(タブレット等ではなく)電子書籍専用端末を買うのが良いだろう、との意見になっています。
本エントリでは、私もその意見について考えてみたいと思います。

もう少し正確に言うと、私も同様に「本好きの人ほどそれを利用するのが良い」と思っているのですが、その私なりの根拠を明らかにするつもりです。

今回はそんな話です。


専用端末


今より少し前の時代には、電子書籍について、ある主張を目にすることがよくありました。
それは、電子書籍では「そこにモノがある」との実感が得られない、ひいては読書の楽しみを感じられない、といった趣旨のものです。
さすがに、近頃はそのような話を聞くこともなくなりましたが、ある短い期間には、私もそのように考えていたこともありました。

私の場合、その考えはいつの間にかなくなって、電子書籍を支持するようになりました。つまり、別に「モノがある実感」がなくても、読書は楽しめたというわけです。

しかし、この度はそれに加えて、また違う感情を持つようになりました。
私は、電子書籍専用端末を使い始めてから、電子書籍に対しても「モノがある実感」を覚えてきているのです。

これについては、ある重要な指摘があります。

『街場の文体論』との書籍に、次のような文章があります。
引用いたします。

街場の文体論(内田樹)
電子書籍は「買い置き」をしておく必要がない。読みたいと思えば、いつでも買える。電子書籍では「積ん読」ということが起こらない。そんな必要ないから。
電子書籍と紙の書籍を比較した箇所からの一文です。
電子書籍の制度からして、そこでは、買った本が読まれずに置いておかれるということが発生しないと述べられています。

私が言及したいのはこの部分です。
というのも、引用のような納得のいく主張があるにも関わらず、私は現状、電子書籍での積ん読が発生しているのです。

このことを考えたときに、少し上で述べた考えに至りました。つまり、私は電子書籍に対しても(紙に対してのそれと類似の)「モノとのしての実感」を感じていることに、です。
すなわちこのことは、私が電子書籍での「積ん読」を発生させていることが、『街場の文体論』で展開されている論を否定する類のものではないことが言えます。『街場の文体論』で「電子は、紙は、」との分類をはっきりさせて話が進んでいる一方、私にとってはその境界が少なくなって、「紙」の話が「電子」にも当てはまってしまっているのです。

これによれば、電子書籍の「積ん読」が起こる理由は、基本的には紙でのそれと同じものが使いまわせるわけです。
それは、本を買うときの私と読むときの私が別人だからかもしれません。あるいは、数字的に絶対に読み切れないほどの本を買っているためかもしれません。きっと他にもいろいろあることでしょう。

話は逸れますが、「別人」に関して、下記のような記事を読みました。引用いたします。

ライフハック心理学 » 別人問題は同一人物問題
たとえば早朝になると決まって同じ「やつ」が現れて、一昨日と昨日と同じく今日も「二度寝したい!」といって聞かないわけです。しかもこの「二度寝したいやつ」はいつも決まって早朝だけに現れるのかもしれません。
大変興味深く感じました。
こちらのお話に則れば、「本を選ぶときに決まって登場してくる私」と「本を読むときに決まって登場してくる私」がいるわけです。

私の場合は、この二人はわりと仲が良く、考え方もだいたい同じ方角を向いているように思います。多少「本を選ぶ私」の方が自分の使える時間を多く見積もってしまうきらいがありますが、それも許容範囲と言える程度です。
結果として、私の「積ん読」はそれほどの量には至らずに済んでいるのかもしれません。

話を戻します。
私が電子書籍にも「モノとしての実感」を感じ、紙の書籍との境界が小さくなってきたために、電子書籍でも「積ん読」が発生しているとの話でした。

ですが、ここにはある重要な条件があります。

私が電子書籍に対して「モノとしての実感」を感じるのは、今のところ電子書籍専用端末に格納されているものだけなのです。
ソニーのReaderを使用し始める以前にも、私はiOSのアプリから電子書籍を購入して読むことが幾度かあり、またそれらはいまだに私のiOS端末に保存されていますが、そこではそういった実感を得ることはありません。
ここでの差異をもたらしているものは自分でもわかりませんし、その感覚は時とともに変わっていくようにも思います。とりあえず、現状ではこのとおりです。

そして、冒頭の話に戻ります。
私にとって、「本好きの人ほど電子書籍専用端末を買うのが良い」のは、購入した書籍に対して「モノとしての実感」が得られるためなのです。


終わりに


それにしても、「紙の書籍」とは味わい深い日本語です。