2012年9月24日月曜日

シャンプーを買う

Clip to Evernote
「メモ」と「記憶」とを見比べたときの「メモ」の面白さの一つは、どんな短期記憶も容易に長期記憶にしてしまえる点だと思っています。

それから、よく言われることに、脳が物を忘れられる機能の素晴らしさがあります。何もかもを完全に記憶できてしまうといろいろ大変である、といったことです。
例えば、こちらの記事に該当する話があります。

R-style » 「情報の整理」についての再考(上) 〜物忘れと「押し出しファイリング」〜

少し長くて申し訳ありませんが、引用いたします。
たとえば仕事の同僚で「鈴木さん」という人がいたとしましょう。その人に会う度に、自分が知っている全ての鈴木という名字を持つ人の下の名前が思い出されたら相当にうっとうしいことは間違いありません。中学校の同級生でもう20年以上も会っていないような鈴木○○さんの名前は頭に上らなくてもよいのです。というか上って欲しくありません。そして私たちの脳は、実際それを実現してくれています。
脳が適当に物事を忘れられるようになっているのは、なるほど非常に便利なようです。

さて、いま、二つのことを言いました。
  • メモは、長期記憶を容易に作れる
  • 何もかもが完全に記憶に刻まれてしまうと、厄介である
メモは放っておけば勝手に長期記憶のようになるわけですから、上記の二つを踏まえると、意識的にメモを捨てなければいけない場面がきっと出てくるはずです。

今回はそんな話です。


BoardMemo


iOSアプリに、「BoardMemo」というものがあります。
アプリの説明はこちらの記事を参照いただければと思います。

[iPhone] 通知センターでいつでも確認!私のBoardMemoの使い方 [ とゆ空間 ]

大雑把に言えば、ささっとメモが取れて、それをぱっと閲覧できるアプリです。iOSの知識がある方に対しては、メモを取ってそれを通知センターに表示できる、と言う方が良いかもしれません。
主としての機能はほとんどそれだけなのですが、もう一つ特筆すべきは、保存したメモの件数をアイコンバッチとして表示できることです。こちらはiOSをご存じでない方には、「自分からメモを見にいかなくても、メモが何件保存されているかだけは(端末を使用していれば)常にわかる」と説明するのが良いでしょうか。

私はこのアプリを、ちょっとしたことの記憶補助のために使っています。例えば、朝家を出る前に気づいた、今日の帰りに買ってくる必要があるものをメモする、といったことです。このような場合は、Evernoteやモレスキンに書くのでは少し都合が良くないのです。

今日の帰りに買うものをメモすると、アイコンバッチに「1」が表示されます。これは先述の通りです。

そうして一日を終えたとき、一つ面白いことが起きます。

私は(多くの人もそうだと思います)、帰る道すがら、iOSデバイスを必ず一度は取り出します。
そこで、BoardMemoに表示されたアイコンバッチを目にして、すっかり忘れていた買い物のことを思い出します。

興味深いのはこの部分です。すぐ上に書いた「買い物のこと」とは、
  • 買い物をしなければいけないこと
  • そこで買わなければいけないもの
の二つを指しています。ところが、私が目にしたのはアイコンバッチの「1」の表示だけですので、ここにある情報は前者の「買い物をしなければいけないこと」だけです。まだメモを見に行っていないので、そこで買うものについては明らかになっていないはずなのです。
にも関わらず、私は買うものについてまで、しっかり思い出しています。もう少し再現すると、アイコンバッチの「1」を見た瞬間に「あ、シャンプー買わなきゃ」と思うのです。

とても不思議です。
これに素直に従うと、メモに内容は関係ないことになってしまいますが、きっとそうではなくて、その情報の鮮度のようなものが絡んできているのでしょう。

一つ言えるのは、よく話題になるメモしたこと自体を覚えていない問題は、想像以上に重要度が高いものなのだろう、とのことです。これを念頭に置いておくと、おのずとメモの取り方が変わってくるように思います。


短期記憶


ここで冒頭の話に戻ります。
ここまで見てきて明らかなように、「BoardMemo」は脳でいう短期記憶のアプリです。よって、多種多様な情報をたくさん記録しておくには不向きなのです。
そこで私は、「BoardMemo」に保存した買い物が何かの事情で完了させられなかったとしても、必ずそのメモを(Evernoteに保存した上で)削除することにしています。
「BoardMemo」が、いわゆる「駄目なタスクリスト」にならないように運用しているわけです。

これが、冒頭で述べた「意識的にメモを捨てて、短期記憶にする」話です。
これによって、「中学校の同級生の鈴木さん」が意識に上ってきてうっとうしくならないようにしているのです。

たぶんこのことも、アイコンバッチを見るだけで買い物の内容まで思い出せることと、無関係ではないでしょう。


終わりに


本エントリでは「BoardMemo」に雑多なメモが集まってしまうことの問題点として、
  • 駄目なタスクリスト
  • 中学校の同級生の鈴木さん
という、非常に抽象的な説明をしてみました。

個人的には満足しています。

それから、今回は触れられませんでしたが、「メモは、短期記憶を容易に長期記憶に変換する」ことは、ほとんどの場合はメリットになるはずです。