2012年1月26日木曜日

ユニークな本

Clip to Evernote
『理系のためのクラウド知的生産術』を読了しました。

『理系のためのクラウド知的生産術』(堀 正岳)

前回記事の終わりにも書きましたが、本書がとても素晴らしくまたユニークであったため、何とか本エントリでそれを伝えたいと思っています。


本書の内容


本書は、インターネットのクラウドサービスを利用することで、理系研究者の日常でいかにして時間を生み出すことができるか、その活用方法について書いた本です。
内容については、この一文がよく表現しているでしょう。理系研究者が時間を生み出すことがすべてのテーマとなっています。
本書ではこのライフハックの考え方に根ざして、Gメール、ドロップボックス、エバーノートのような、それ自体として便利なサービスをご紹介するにとどまらず、いかにしてそれらを利用すれば日常の研究時間を生み出すことができるのかという視点からの解説も試みました。
そして、クラウドサービスとして具体的に登場するのがDropboxやEvernoteなどだということですね。あちこちで言及されていますが、これらのツールはいわば基本的なものであり、その使用法にも特別トリッキーな技が出てきたりしません。

このあたりに、本書が他に類を見ない点の一つめがあると考えています。


唯一無二な点、一つめ


基本的なものしか登場しないということは、本書が具体的なツールに依っていないことを意味します。何も目新しくない書籍は、発表されないためです。

これまでこの界隈の人たち(ライフハック界隈、と呼ぶことにします)が何をやっているのかは、そうでない人にとってはわかりにくいものでした。
ライフハックについての文章などを読むと、このツールが良いとか、こんな新しいツールが出たとか、そういったことはわかります。しかしこれだと「では、この人たちは普段からいろんなツールを使って遊んでいて、それがライフハックというものなのだな」との認識しかもたらしません。
もしライフハックに興味を持って調べてみた人が、そのように感じてしまったとしたら、非常に残念です。ツールをたくさん使えば人生が良くなるとは、とても思えないからです。

本ブログでは何度も強調してきましたが、ライフハックとはそんなことではないはずです。

そしてついに、ツールの話を(それほど)せずにライフハックを紹介する書籍が著されたわけです。
この200ページ弱の本には、ライフハック界隈の人たちがツールを使って何をしているのか、どうしたいのかが書いてあります。
そんな書籍はこれまでなかったろうと思います。

この界隈にまだ足を踏み入れていない人がライフハックを知るには、この本だと言っていいでしょう。


唯一無二な点、二つめ


二つめも、一つめとそう異なることではありません。

これについては、前々回の本ブログのエントリに伏線が張ってあります。
こちらです。


この中で、私のライフハックへの考えとして「それで、人生がどのように変わるか?」との視点を紹介しました。
私がとても大事にしている見方なのですが、本書には、このことがたくさん記されています。

一つだけ引用してみます。
あなたの頭脳は、考え事を抱え込んで不可能なジャグリングをするための場所ではありません。思考をもクラウド上に解き放つことで、私たちは貴重な思考力を次のひらめきのために用意しておくことができるのです。
これを実現するための手段として、ツールやテクニックがあるわけですね。

上の引用文以外にも、徹底して人生や生活がどう変わるかが語られています。
このことは、すでにある程度この界隈のことに知識があり、多くのツールを使用している人にとって非常に価値があると思います。ツールは使っているけど、いま一つメリットがわからなかったりとか、便利に使えていなかったりとか、そんな気がしている人が読むと、たくさんの知見を得られるに違いありません。

やはり、このような書籍はこれまでになかったでしょう。


余談


以上に挙げた点は、一つめはほとんどライフハックについて知らない人へのメリット、二つめはある程度知っている人へのものです。

さて、本書は基本的にはこの分野のことを知らない人(研究者)が読むことを想定して書かれているようです。
ところがEvernoteについての話で、このような記述がありました。
すると行き当たりばったりだった作業が、ノートの中で次第に形をとっていきます。
私はこのことに大いに共感し、一人盛り上がったりしました。それなりにEvernoteを使っていると、こういった体験をすることがあって、この意味が実感できるのです。
初心者向けの本だと思って気を抜いていると、たまにこういった文章が出てきます。
さすがです。

それからもう一つ、ここまでで私がライフハックと呼んできたのは、すべて私個人の定義によるものです。少なくとも、著者の堀氏が考えていることとは異なっていると思いますので、その点にはご注意いただきたいです。
これは、堀氏が「ライフハック」の単語を出しているのを、私があまり見たことがないためです。

すなわち本エントリは、「理系研究者が時間を生み出すこと」について書かれた書籍を、ライフハックの観点から読み直したものだということもできます。


終わりに


「ユニークである」というのは、理系の人が使う言葉で「唯一の」とか「一意の」といったことを意味しています。
「変わってる」などの意味はありません。
私も昔、これがわからなくて苦労しました。